あの時彼は

5/7
前へ
/20ページ
次へ
寄り添ってくる体温が、嬉しくて気持ちよくて ばくばく鳴ってる心臓の音が、慎さんにバレませんように。 ぴくりとも動くわけにはいかない状況の中、また一つ、心臓を破壊するような事態が起こる。 床に投げ出していた手に、添うように体温が触れる。 慎さんの手だ。 手のひらに寄りそうように慎さんの手の甲が置かれ、思わず指が動きそうになる。 ほっそりとした指の形をなぞってしまいたい。 だけどそれをしたら、起きてるってバレて怒られる……。 怒られるのはいいけど、この体温が離れてしまうのが勿体ない。 こんな風に、こっそり寄り添ってくれる気になった慎さんの気持ちが、嬉しかった。 上手く今起きましたなんて演技をする自信はないし、どうせ怒られるならもうちょっとだけ。 もうちょっとだけ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

465人が本棚に入れています
本棚に追加