夜と傷と、【陽介目線】

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ちょっと待て。 ちょっと落ち着こう俺。 慎さんは、最後まで披露宴を逃げ出さずに戻ってきたら、と言ったんだ。 まだ、決まったわけじゃない。 ああ、それはそれでハラハラする。 怖い思いとか嫌な思いせずに、最後は笑って出てきてほしいと思うけど。 怖い思いとか嫌な思いをするくらいなら、今すぐ逃げ出して来ればいいとも思う。 どっちがいいんだ。 自分でもわかんねえ。 もう何を基準に考えればいいのやら。 大きく深呼吸して、顔の前で手を組んで額を乗っける。 なんか頭が揺れるなと思ったら、肘をついていた膝が忙しなく貧乏ゆすりをしていた。 そうして明らかに不審な俺の前を、時折従業員がちらちらと目線を投げながら通り過ぎていくのを何度か見るうちに、また一時間以上が経過した。 多分もう、大丈夫だということだろう。 つまり俺は、今夜の対策を考えなければならない。
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