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ああ。
やべー……麻酔が切れて来たら尋常じゃないくらいガンガン頭に響く。
歯医者でもらった頓服を飲んで、ちょっとは和らいできたけど無痛になるということはなかった。
でもいい。
痛いのは消えなくても、辛いのは忘れさせてもらうんだ。
散々かっこ悪いとこ見られたし、もうどうせだから今日は目いっぱい甘えるんだ俺は。
いつもなら「変態」の一言で絶対してくれなかっただろう、「彼シャツで膝枕」なんて。
そんな彼女が今、目の前で俺のシャツを二枚広げて、ちょっと赤い顔で俺を睨んでいる。
ワイシャツと、普段着用のカジュアルなやつ。
どっちか選べ、という意味だと思う。
俺が余りにしょっちゅう来ては泊まって行くから、仕事用と休日用と何着か着替えを置かせてくれるようになった、その中の二枚だ。
「えっと、じゃあ、ワイシャツの方で」
「……わかりました。着替えてきます」
真面目な顔で頷いてから、それを手に風呂場の方へ向かう。
脱衣所から布の擦れる音に混じって、真琴さんのボヤキが聞こえた。
「……こんなもの、何が嬉しいんだか」
何がって。
全部嬉しいに決まってるじゃないすか。
慰めだろうと哀れみだろうと、俺の為に「彼シャツ」着てくれる真琴さんも、膝枕も、恥ずかしいの我慢してくれる姿も。
うあああ!
やべえ!
即刻襲い掛かりそうな気がする。
だめだだめだ、ちゃんとその姿を堪能してからでないと。
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