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どうやら彼は、過去に一度だけ虫歯で歯医者の世話になったらしいが、その時にかなり痛い思いをしたらしい。
朝、僕の部屋を出るときから青い顔をしていて、足取りが重い。
「大丈夫ですよ、痛い時は麻酔してくれるし」
「……っす。すんません、こんな朝から付き合わせて」
「いえ、僕は検診程度ですし構いませんが」
ひとりで行かせたら逃げ帰ってきそうな気がして、僕も定期健診を受けることにしてついて来たのだが、本当は今までそれもしたことがなかったから、まあいい機会でもある。
「……無事帰って来れたら、膝枕してくれますか」
「無事って。まあ、いいですけど」
膝枕程度で、ごねずに治療を受けてくれるなら安いものだ。
「できれば、な、生足で」
「ま、まあ、それでも」
「彼シャツ着て」
「は?」
「つまり俺のシャツ着て、生足で、膝枕……」
「調子に乗るなバカ」
久々の変態発言だふざけるのも大概にしろ。
こちらは真剣に心配してるのに。
と、ちらりと横目で睨んだら、本人は至って真面目な顔だった。
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