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「それでは、今日は麻酔が切れたら痛みが強くなってくると思うので、これを飲んでくださいね」
「はい、ありがとうございました」
すっかり魂が抜けたようになっている陽介さんの代わりに会計を済ませて、痛み止を受け取った。
「ほら、立って。帰りますよ」
と、彼の手を取ると、のろのろとソファから立ち上がる。
もう片手で治療された方の頬を押さえているからよく見えないが、かなり腫れていた。
歯医者を出て、手を繋ぎながら帰り道を歩く。
いつも煩いくらいの彼がこんなに静かだと、やたら心配だし可哀想にもなってくる。
「……真琴さん」
ぽそ、と名前を呼ばれた。
麻酔が効いているせいか、少し滑舌が悪かった。
「……今日も、泊まりたいっす」
「いいですよ。ほら、もう泣かない」
と、言いながらハンカチを差し出した。
大の男が歯医者程度で、と思ったが。
確かに今日のアレは、怖かっただろう。
「帰ったら、膝枕……」
「わかってます。貴方のシャツ着て、ですよね」
「な、生足で……」
「はいはい」
繋いでくる手がいつもより強くて、本当に子供みたいだ(変態だが)
可哀想ではあるが、可愛らしくもあり、彼に隠れて少し笑ってしまった。
※※※※※※※※※
歯が痛い。
あとがき
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あの荒療治は
旦那が親知らず抜いてもらった時の実話です。
………おそろしい!
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