一章 続・紅き意志、それぞれの望み

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そして。 「ここか。」 遂にシークは、そこに辿り着いた。 目の前には再び扉が一つ。 マナの気配からして、クルスがこの部屋に居るのは間違いない。 シークはゆっくりと扉を開け放ち、中へと進む。 「ぐぬ…やはり、止められなんだか。」 部屋に入るや否や、シークの姿を確認したクルスが苦々しい表情で言った。 「観念しろ。最早逃げ場は無い。」 「私を一体どうするつもりだ?」 「先ずは話を聞かせて貰う。後はそれ次第だな。」 「話?…ふん、むしろ私が色々尋ねたいくらいだが。」 返ってきた言葉を受けて、クルスは苦々しい表情はそのままに、ふんと鼻で笑って見せた。 「お前が私の知る人物ならば、そのような若さの筈がない。封印されていたなどと言っていたが、お前は何者だったのだ?」 「質問をするのは此方だ。何故、ユノーを貶めた?お前自身、並々ならぬ恩が有ったはずだ。」 「むぅ!?」 思わぬ内容の質問に、クルスはぎょっとしたように目を見開く。 何故それを知っているのか、と。 「それに、今の魔術に関する在り方についても聞きたい。大方お前の差し金だろ。」 更に重ねて向けられた質問に、クルスは思わず一歩後退る。 やはり後ろめたさが有るのか。 シークがゆっくりと近付いていく。
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