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「全ては教会の…延いては世界の為だ。」
「なんだと?」
返ってきた言葉に、シークはぴくりと眉間に皺を寄せた。
そしてその場で立ち止まり、続きを待つ。
「あのままでは、また再び国同士の戦が始まっただろう。だからこそ、教会が至高の存在であると知らしめねばならなかった。」
「勇者を一転して罪人同然にしてでもか。」
「無論だ。一人の犠牲で多くを救えるならばと、彼女も認めてくれた。」
「なんだと…!?」
思いがけない言葉に、今度はシークが、かっと目を見開いた。
クルスは構わず話を続ける。
「魔術の知識に関しても同じ。大き過ぎる力は争いの種になる。ならば、神聖な存在たる教会が、それらの在り方に干渉してこそ、元から禍根を絶てるのだ!」
「ならば、ガイラル領に派遣した騎士への処遇についてはどう答える?」
己の行動の正当性を説くようなクルスへ、シークは新たな疑問をぶつける。
途端、自信に満ち始めていたクルスの顔がくしゃりと歪んだ。
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