一章 続・紅き意志、それぞれの望み

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「シーク!!シーク!!」 「僕が診ます!」 錯乱するセレスを押し退けて、ヴァイスがシークの傷を確認する。 シークの腹にはぽっかりと穴が有り、そこからは血がとめどなく溢れ出ていた。 いけない…!! 臓腑への甚大なダメージを悟り、ヴァイスは焦りの色を浮かべた。 この場所ではろくな処置が出来ない。 ヴァイスの只ならぬ様子に、セレスはより一層喚きだす。 「シーク!!やだやだ死なないで!」 何とか策はと思考を巡らせるヴァイスのすぐ横まで来ると、 「止まってよ………止まれぇぇぇッ!!」 セレスはかつてシークから施された治癒の魔術を使ってみせた。 勿論シークからやり方を学んだ訳ではない。 完全に地力による会得であった。 予想外の行動に驚くヴァイスを尻目に、セレスは必死で術を施す。 彼女自身、己のそれには驚愕の一言しか無かったが、今はそれどころではない。 セレスは無我夢中でシークの身体に向けた掌に力を込めた。
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