一章 続・紅き意志、それぞれの望み

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セレスに黙って出発してから。 これ程まで、独りというものに退屈さを感じたのは随分と久し振りのことだった。 …いや、退屈なだけではない。 「俺もまだまだ…か。」 短く呟いたシーク。 ポルトネから関所に到着するまで。 通過する為に利用した雇い主が面倒を起こし、逃げ出した後。 そして…今、教会領への入口。 その高い壁を前にしながら彼が感じていたものは、間違いなく「寂しさ」であった。 かつても、仲間と呼べる者達と多くの時間を共有した。 その後、永い時間を独り静かに遣り過ごす内にそんな気持ちは忘れてしまった。 そう、思っていた。 しかし今の自分はどうだ? 確かに独りで在ることに寂しさを感じている。 「と、感傷に浸っている場合ではないか。」 当初の目的を思い出し、眼前に建つ壁を見上げた。 本気で強化を施せば、軽く飛び越えられそうだ。 が、限りある能力をあまり消耗し過ぎる訳にはいかない。 現状の目標以外にも、やらねばならないことが有るのだ。 可能な限り節約せねば。 「用意しておいて正解だな。」 シークは再び呟いてそれを取り出した。 鉤爪付きのロープである。
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