一章 続・紅き意志、それぞれの望み

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ザザザッ…。 文字通り、風を切るように走りながら、シークはつい先日までの出来事を思い出していた。 「そういえば…。」 ガイラル王、グレアムについて気付いた。 友となる条件として、 「大っぴらにはしないこと、それが条件だ。」 確かにそう言った。 なのに、グレアムは魔物を追い払った後で声高々に民達へセレスを紹介してしまった。 「今更気付くとは、な。」 それだけ気が緩んでいたのだろう。 結果的に悪い方向には進んでいないので、一先ず問題ではないが。 と、そこまで考えたところでまたすぐに気付いた。 また自分はセレスのことを考えていた。 勝手に置き去りにしたのは自分だというのに、何とも間抜けな話である。 ヴァイスのように、或いはそれ以上に後ろめたい過去が有るからか。 それとも…もっと違う何かが自分の中に有るのか。 どちらにせよ、今後も苛まれるのだろう。 この、何とも言えない気分に。 そこまで考えて、シークは唐突に足を止めた。 何のことはない、目的地に到着したのだ。
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