一章 続・紅き意志、それぞれの望み

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またしても目の前には高い壁。 しかしその向こうで僅かに覗く建物の屋根を見て、ここが中央とやらなのだろうとすぐに理解した。 少ししか見えないそれは、豪勢な造りである。 教会の「存在」を示すには、あれぐらいは普通なのだろう。 「さて…どうするか。」 壁のすぐ傍まで近付き、シークは呟いた。 正面から堂々と入る…というのが勿論理想だが、そんな方法が無理なことは既に解り切っている。 では再び壁を飛び越えるか? それも好ましいとは言えない。 何故なら、今目の前に有る壁の先は「街」だからである。 飛び越えるのは容易い。 先程のお陰で力加減もある程度は身に付いた。 が、万一飛び越えて降り立った先に誰かが居たら? 大騒ぎは免れない。 そんなことになれば、目的の相手に辿り着くことにどんな弊害を招くか予想出来ない。 等と考えている内に、遠くから人影が。 「見回り…か?」 どうやら迷っている場合ではないらしい。 シークは壁のすぐ向こう側に向けて、意識を研ぎ澄ました。 …どうやらすぐ向こう側には誰も居ない可能性が高い。 話し声や足音は勿論だが、物音さえ捉えられない。 これなら飛び越してすぐ誰かと鉢合わせ、という事態にはならないだろう。 と、そこへ、 「大司教様~!!」 壁の向こうから、そんな歓声が聞こえてきた。 大司教…!? 街中に居るのか。 シークは地面を蹴る。 ほぼ無意識に取ってしまった行動だった。 シークの身体は街の壁を軽々と越え、 「た…大変だ…!!」 見廻りに来た兵士がそれを見た途端、大慌てで門へと向かっていったのだった。
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