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またしても目の前には高い壁。
しかしその向こうで僅かに覗く建物の屋根を見て、ここが中央とやらなのだろうとすぐに理解した。
少ししか見えないそれは、豪勢な造りである。
教会の「存在」を示すには、あれぐらいは普通なのだろう。
「さて…どうするか。」
壁のすぐ傍まで近付き、シークは呟いた。
正面から堂々と入る…というのが勿論理想だが、そんな方法が無理なことは既に解り切っている。
では再び壁を飛び越えるか?
それも好ましいとは言えない。
何故なら、今目の前に有る壁の先は「街」だからである。
飛び越えるのは容易い。
先程のお陰で力加減もある程度は身に付いた。
が、万一飛び越えて降り立った先に誰かが居たら?
大騒ぎは免れない。
そんなことになれば、目的の相手に辿り着くことにどんな弊害を招くか予想出来ない。
等と考えている内に、遠くから人影が。
「見回り…か?」
どうやら迷っている場合ではないらしい。
シークは壁のすぐ向こう側に向けて、意識を研ぎ澄ました。
…どうやらすぐ向こう側には誰も居ない可能性が高い。
話し声や足音は勿論だが、物音さえ捉えられない。
これなら飛び越してすぐ誰かと鉢合わせ、という事態にはならないだろう。
と、そこへ、
「大司教様~!!」
壁の向こうから、そんな歓声が聞こえてきた。
大司教…!?
街中に居るのか。
シークは地面を蹴る。
ほぼ無意識に取ってしまった行動だった。
シークの身体は街の壁を軽々と越え、
「た…大変だ…!!」
見廻りに来た兵士がそれを見た途端、大慌てで門へと向かっていったのだった。
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