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「久方ぶりだな、クルス。話を聞いてまさかと思ったが、やはりお前のことだったか。」
シークは大司教の顔をじっと見詰めて、言った。
その言葉に大司教…クルスは一瞬ぎょっとしたように目を見開いたが、すぐに落ち着いた表情に戻り、
「はて…何処かでお目にかかりましたかな?」
と、不思議そうに首を傾げてみせた。
狼狽えた様子をすぐに消してみせる辺り、民衆の目の重さを良く理解している。
「忘れたか?ま、あれから何十年という月日が流れた。当然と言えば当然か。」
「何十、年?」
「ユノーとラインを引き合わせたのはお前だろ。あの時、俺も居たよな?」
そこまで話したところで、シークは被っていたフードを外した。
周りの人間がその容姿の見事さに感嘆の声を漏らす中、クルスだけはただシークの顔を食い入るように凝視していた。
まるで、信じられない物を目撃したような表情で。
「何故、お前が。それにその姿は…!?」
「ふっ…何、長い時間封印されていただけだ。さて、お前には色々聞きたいことが有る。」
「封印…?まさ、か!?」
「急がしそうだが、時間を作ってもらうぞ!」
動揺が隠せなくなったクルスをじっと見据え、シークは彼に歩み寄っていった。
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