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「きみはマックでバイトしていた子だろ? うちに来るなんて驚いたよ」
アベノ生命でわたしの指導係りになった佐野先輩は、わたしが入社したことに驚いていた。わたしだって、昨日マックに来たお客さんが指導係りになるなんて信じられないけど。
「わたしもです」
「これから数日間はきみの指導をすることになるけど、会社には10分前出勤を心がけてくれ。新人さんは先輩の仕事ぶりをよく見て覚えるように」
「はいっ!」
以前に誰かに言われたような気がすると思いながらも、わたしはそう返事をして、佐野先輩に続いた。
確かマックでは"娘さんの仕送りや養育費"のことを言ってたけど、ここで働きながら一人でそれをやるって大変なんだろうな。
「佐野くん、沢谷さんとこの契約はどうなったんだ?」
部長が佐野先輩に訊ねて来た。
「沢谷さんとこは留守だったんで、契約に取り付けませんでした。申し訳ありません。福田さんとこは契約して頂けました」
佐野先輩はそう言いながら、部長に深々と頭を下げる。堅物なとこはあるけど、すごく真面目な先輩だ。
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