声なき魔道士たちのうた

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 ともちさんは紫色の蝶の吸血を回避する為、後退しながらハートの盾で飛来する蝶をかわす。 画面の死角から、みんとさんが動き始めた。  「オミナエシサン」  首に金色の鈴とアクセサリーを一つ増やしたみんとさんは、呪文の詠唱でアイスブランドを装備すると、ちゃまるさんに駆け出した。 みんとさんが走る、グレートブリチャン島の砂浜には次々と氷が張り付き、みんとさんをスケートのように滑らせる。  「トラガミ、カムイサン!」  カオルさんは折り鶴の上から呪文で龍を召喚し、みんとさんを迎撃させる。和装したカオルさんは、和風の呪文と相性が良く異名の「水龍の巫女」に相応しいグラフィックだ。 みんとさんも負けていない。氷の上をスルスルと滑りながら頭上から襲いかかって来るドラゴンの噛み付きを紙一重でかわしながら、ちゃまるさんに接近する。 ちゃまるさんは、そこであさむねさんとタッチで交代したっ! グレーのダッフルコートに、白のタートルネックのニットとデニムに着替え、髪を茶髪に染めて練習では付けていた無精髭を綺麗に沿ったあさむねさんは、練習とは雰囲気が違う。  「スズピーサン」  あさむねさんは呪文を詠唱し、練習で猛威を振るったライトニングソードを呼び出すと、両手に構えた。 嘗ては同じギルドに所属し、お互いに切磋琢磨して来た戦友。共に上を目指していきたいと思う仲間。一人はギルドに残り、一人は新しいギルドのリーダーとなり、それをわたしに受け継いだ。フリーメイ村との戦いでは、二つの生き方が一つになった。  そんな二人が、今、一つのバトルマップで対峙した。 どのゲームにも共通することだけど、プレイヤーのプレイスタイルは生き方を反映する。戦うひとは戦い続けるし、逃げるひとは逃げつづける。勿論、相手のことを認めるか、批判するかも、全て......
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