ギルドランク圏外のギルド

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 「ベロベロバ」  漆黒の鎧に黄金のマントを羽織った、本日の対戦相手"ぼったー"さんは右手を私の方に向けると呪文の詠唱を始めた。 ぼったーさんの足元に、小型の魔方陣が展開し、そこに記されたカタカタがぼんやりと光る。ぼったーさんの手に集まると、まるで社会科の教科書で見たような阿修羅の像に形を変えた。 このスマホアプリゲーム"魔導詠唱マジックヴォイス"の戦闘時のエフェクトはいつみても綺麗だ......  関心している場合じゃない!  私も呪文を詠唱して応戦すべく、魔方陣のカタカナを読み上げる。  「ブロブロブ」  読み上げられた文字たちは、赤く点滅すると小さな花火のようにぱっと燃えると、わたしこと『えくれあ』の手でトーテムポールのような武器になり、人の顔をした部分から火を吹き出した。魔方陣には新たなカタカナが現れた。  「ミキミキミ」  ぼったーさんは、新しいカタカナの続きを唱え始める。 点滅する文字たちに照らし出れたそれは、西洋の路地裏の雰囲気が漂う対戦マップ"ナイトウォーカー通り"には似つかわしくない阿修羅像の六本の腕にそれぞれ短剣になって装備されていく。そしてくるくると回転をし始めた。 まさか、こんな呪文を使ってくるなんて予想外だよっ! 『公平になるように、皆さんと同じくレベル1からゲームをプレイしながら、メンテナンスやシステムの改善にあたっています。戦闘で使う魔法や操作キャラクターのグラフィックは皆さんのホーム画面からでも入手できるものです』 ......って運営プレイヤーのぼったーさんは、チートなしを公表してくれたから、納得して対戦を引き受けたけど。 あの阿修羅像の一撃で、えくれあの体力700はどれだけ削られるのか考えたくはないが、わたしだってただで殺られるわけにはいかない。
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