暗殺者が仲間になった

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 「ハトコハトコっ!」  呪文のつづきを詠唱した時、心拍がどくんと大きく跳ねあがった。なんだろう、この感覚。時間が来るまでに、せめてともちさんに一撃だけでも攻撃を当ててみたい気持ちに駆られているわたしがいる。 えくれあは、わたしの心情が憑依したように、何時になく、がむしゃらにフレイムタンを振るっている。  ともちさんも動き出したっ!  ハートの盾でフレイムタンをガードすると、すかさずスペードの剣でカウンターを仕掛けて来る。  「ともちっ!」  わたしは名前を叫んで、スペードの剣の薙ぎ払いを受ける前に、フレイムタンでカウンター返しを狙うが、ともちさんはそれを分かっていたようにシールドでガードする。 カウンター返しは、このゲーム世界では最早、共通のテクニック。カウンターの応酬だけでは、相手にダメージを与えることは出来ないと言うことか。  ともちさんの次の行動が、それを分からせた。  足元の煉瓦がボコッと隆起してともちさんを持ち上げたのだ。  「どういうこと? ともちさんは呪文を二つ使えるの?」  剣と盾の呪文に、呪文効果とは関係ない強化があるとは思えないし、呪文を装備出来るのはひとりひとつだけの筈だけど...... わたしの疑問をよそに、ともちさんは頭上からジャンプしてスペードソードを振って来た。防御するか、カウンターを突くか、判断が間に合わないっ!
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