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「こら、田代、教えるな」
ヤバい。先生に見つかった。
北原くんは黒板に向かって、呪文のようにブツブツとあたしがさっき言ったことを繰り返している。大丈夫かな、と心配になった。
「おーい北原、難しく考える必要ないからな」
山辺っちはいつも厳し過ぎるほど厳しいのに、北原くんには優しい声で言った。あたしはそんな北原くんがすごいと思った。厳しくて、いつもしかめっ面をしている先生の気持ちまで解してしまうとは。何と言う天然パワー。
「あ、わかった!」
知恵の輪が一度解けると、北原くんはすらすらと問題を解きはじめた。
「先生、出来ました」
「ようし。教科書忘れるなよ。おい、隣のやつ、北原に見せてやれ」
北原くんはポリポリと頭をかきながら席に戻っていった。
その休み時間のことだ。
「田代さ~ん、さっきはどうもね~。はい、これ、お礼」
「え? あ、ありがと」
何かをあたしの机の上にポン、と置き、彼はさっさと行ってしまった。
「翔ちゃ~ん、トイレ行こう」
「1人で行けよ、女子じゃあるまいし」
と叱られている。
あたしの机の上には……怪獣ケシゴムって、小学生?
しかもこれ、何の怪獣? ウニ? ハリネズミ? ハリセンボン? よくわかんないんですけど~。
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