あかねの恋

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 何だろう、随分、雰囲気がふわっとした人がいるなァ。  それが、北原 仁だった。  ああ、あの人、確か自己紹介で「ぼくの名前は北原仁。仁丹のジンです」なんて言ってた人だ。  イケメンというわけじゃない。ごくフツーの、目立たないけどクラスにいるタイプ。背も低めだし、喋り方もゆっくりだし、現国の教科書を読ませれば3行に1度は噛む。  休み時間、「おまえ、人の話、ちゃんと聞けよ」と池永くんから頭を小突かれ、 次の授業は生物なのに、教科書を間違えて机の上に出し「今日は英語ないぞ」と黒川くんから指摘され、 「翔ちゃ~ん」と田宮くんにスリスリしている。  何なんだ、あの、ふんわり感は。  何か、水族館で見たタツノオトシゴだとかウーパールーパーだとか、漂ってる感は他の人にはちょっと見当たらない。  か、可愛い…。  どう見てもバスケ部の3人の弟分っていう感じがする。  それが、ジンのことを気になり出した最初だった。
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