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あたしは一番前の席。嫌だったんだけど、この席のお蔭で北原くんと話をするきっかけが出来た。
二限目が数学の日。
ところが、北原くんは教科書を忘れて来たらしい。
そのことに気づいたのが休み時間終了のチャイムが鳴ってから。
「あ、次、古文じゃなくて数学だった!」
慌ててごそごそし出した北原くんだったけれど。
「やべえ、俺、数学の教科書忘れた~。翔ちゃん貸して」
案の定、「バカか、おまえ。他のクラスのやつから借りて来いよ」
と田宮くんに言われている。「早くしろよ、山辺っち怖えから」
山辺っちというのは数学の山辺先生で、50代くらいのとっても怖い先生。
しかし、時すでに遅し。山辺先生と教室を出て行こうとした北原くんがドアのところで鉢合わせ。
「ん? 北原、どうした?」
北原くんは山辺先生の目の前で直立不動の姿勢になり、
「すみません。教科書を忘れました」と正直に話した。
あれ? 随分潔いのね。
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