嘉永三年 冬

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『こんにちはー。八郎ですっ!!どなたかいらっしゃいますかー?』 八郎?この雪の中を?歩いてきたの? いつも思うんだけど、五、六才の子供がこの距離を一人で歩いてくるってどうなの!? 思わずおふでさんと顔を合わせてしまった。 『大変っ!!お湯の準備をしないと。時雨ちゃんお迎えにいってもらえる?』 『はいっ!!いってきます。』 早く行ってあげないと八郎の足が霜焼けになったら可哀想!! 『はちろー!!いらっしゃい。いま、おふでさんがおゆのじゅんびしてくれてるよっ。』 『時雨くん、おはようございますっ。今日はお土産があるんですよっ。どうぞっ。』 八郎はわたしが持っていた手拭いを受け取ると抱えていた風呂敷をくれた。 『おもっ!!なにが入ってるの?』 『お餅ですよっ。うちでついたんです。』 『すごーい!!今度はお餅つきに呼んでねっ!』 『はいっ!!また来年、誘いますね。』 はぁ。可愛い。白蓮と並べて愛でたくなるわ。 さっきまでおふでさんと居た部屋に通すと火鉢に炭を入れてる周助さんがいた。 『ひばちだぁーーー!!しゅーすけさん!!だいすきっ!!』 『うわっ!!あぶねぇッ!!』 嬉しさのあまり周助さんの背中に飛び付きました。 『うわぁーいっ!!これで温かいねっ!!』 『だなっ。これで餅がありゃーな。』 『こんにちは。周助さんっ。お餅ありますよ。』 『八郎っ。来てたのか。』 『はい。昨日、うちで餅つきをしたんですよ。いつもお世話になっているので、父が持っていけって。』 『一人で来たのか?』 そうそう。それが気になってた!! 『いえ。途中まで家の者と来ましたよ。帰りも迎えに来てくれるそうです。あと、先生に父から手紙を預かっています。今日は他流試合があって直接来れなかったので。』 今日はお迎えが来るのか。それじゃあ帰りは心配ないねっ。
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