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振り向くと兄弟子がドヤ顔で雪玉を握っていた。
『お前もな。』
『ぶへっ!!』
ひどい!!真正面から顔にやられた!!
これはやり返すしかないわね!!
『しぐれぇ!!ぼくに雪玉集めて!!』
『りょっ!!』
せっせと雪玉を作っては白蓮に渡す。
『お前ら二人とか卑怯だろっ!!』
『とししたをいじめるほうがわるいのっ!!』
うりゃー、とか、やめろー、とか、まてー、とか、見てるだけなら楽しそうだよね。
だーけーどー!!!
寒い!!!!もう寒い!!
そして、痛い!!
雪玉作る手が!!真っ赤になったよぉ~。
着物濡れて重い!!
袴が足に張り付いて冷たいっ!!
部屋の中に入りたいよぉ~。
子供が風の子なんて嘘だよぉ~。
八郎今、何してるかな?
火鉢の近くで勇さんと本を読んでるかな?
あー。なんか、やる気なくした。
パタリ。
雪玉を作るのを放棄して雪の上に倒れてみた。
真っ白な空。
すごいな。どこまでも真ぁーーーーっ白な空。
当たり前だけど電線も電柱も高いビルもない。
空がすごく大きく見える。
いや、実際大きいんだけど。
白蓮達の声も空に吸い込まれて。
何だか、空に飲まれてるみたいだ。
『何をしてるんですか?』
ぽやーと空を見ていると不意に八郎が顔を覗き込んできた。
『はちろー?』
『はい。楽しそうなので来ちゃいました。それで、時雨くんは何をしているんですか?』
『んーー?なんか、そらがおおきくてね?こーんなかんじで、すいこまれちゃうのかなーっ?ておもってたの。』
真っ白な空にぐーっと右手を伸ばすと、温かい手に包まれた。
『ダメですよ。』
起こしてくれるのかと思って、引っ張ってくれるのを待っていたんだけど、八郎はわたしの目をじっと見て怖い顔をしていた。
『ダメです。たとえ、空が欲しくてもあげませんから。』
誰にも。と八郎は呟くとやっと引き起こしてくれた。
『ありがとう。はちろー?なんか、おこってる?わたし、そらはいらないよ?とらないからね!!』
八郎の目が暗く沈んだ気がして咄嗟にそう答えていた。
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