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今は、とても喜べない。
俺は誰へともなく呟いて、そのまま道具を持ってグラウンドに出て行った。
……鶴屋君が何かを言いたげな表情をしていたが、それは無視した。
「せーんぱいっ! なにしてるんですかー?」
で、グラウンドに出て数分。再び眩しすぎる笑顔が視界に飛び込んできた。
「……柔軟だけど」
俺はそっぽを向きながら淡白にそう答えた。完全拒否の構えである。
「ふーん……。あ、じゃあ補助してあげますよ」
自由奔放な奴だなぁ……なんて思いながら俺は長座体前屈を続ける。
後ろに回った橘が俺の背中に手を添えてくれる感触が伝わってくる。
まぁ補助くらいならありがたい。背中から伝わってくる橘の力が段々と強くなっていって、それに伴い俺の身体がどんどん沈んでいきパキパキと嫌な音を立て筋がブチ切れんばかりに伸びてってちょっと待てぇ!!?
「いだだだだだだだだだ!!!?」
「あれ、もう? 先輩かたいなー」
「いや少し柔らかい方だよ! というか押しすぎ戻して戻して!?」
「まぁこの際だからもう少し」
「この際ってなんなんあばばばばばばばばば!!」
もう二度と橘に柔軟の補助はさせない。そう強く誓った日になった。
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