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授業が一通り終わった後。
パワフル学園大学の野球部グラウンドでは新入部員達が集っていた。
季節は春。新入生達がキャンパスライフに胸を馳せる時期と同時に……部活動にも新たな風が吹く。
「今年もいっぱい来たでやんすねぇ……新入部員」
「……そうだな」
「……マネージャーで可愛い子が入ってきてくれれば尚嬉しかったんでやんすが」
「……そうだな」
「……オイラの話、ちゃんと聴いてるでやんすか?」
「え? あ、ああごめん」
隣で丸眼鏡をくいっと押し上げる友……矢部明雄君の言葉を上の空で聞き流していたら、ジト目で睨まれた。
「可愛い子って、矢部君。優乃さんも充分可愛いじゃないか」
「優乃さんはもちろん可愛いでやんすが新しい刺激も欲しいのでやんす!」
「あ……そう」
矢部君は出会った時から相変わらずだ。
俺はしょんぼりしている矢部君を尻目に、空を見上げる。
清々しい程青色の空に、僅かな雲が程よく霞をかけ、春独特の穏やかな陽気を届けてくれる。
「いい天気だね……」
「え? ああ、そうでやんすねぇ」
新入部員の事も忘れて、俺はそんなことを呟いていた。
優しい風が頬を撫でてくれて気持ちいい。
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