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「はぁっ……はぁっ、ゲホッ、げーっほ!」
気合を入れすぎた。
元々、投げる以外に大した脳のない俺は走るのだとかは苦手だ。正直なところバッティングもそんなに巧みなわけではない。
野手としての能力で言えば矢部君と比べて遥かに劣るだろう……。
「お疲れ様、パワプロ君。大丈夫?」
「……優乃さん。ありがとう」
お礼を言いながら優乃さんが手渡してくれた冷たいドリンクを一気に喉に流し込む。
……体の芯から生き返るようだ。
笑顔の優乃さんにドリンクの入っていたボトルを返して、ようやく一息つく。
「あんまり無理はしないようにね?」
「き、気をつけます……」
優乃さんは気遣いが上手い。部員一人一人に気を配り、こうやってしんどそうにしているとドリンクを届けに来てくれたりする。
本当によく出来たマネージャーだ。さながら女神のようだ。
……それはちょっと言いすぎか?
「そういえば、知ってる? パワプロ君」
「え、何がですか?」
「二年生に転校生が来たらしくて、その人は野球部に入部したんだって。さっき遅れて来たわ」
座り込んで休んでいると、不意に優乃さんがそんな事を言い出した。
転校生、ねぇ……それはまた珍しい。
「へぇ、どんな人なんですか?」
「そうね……あ、居た。あの人よ」
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