第1章「新入部員の女の子」

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俺が興味本位でそう聞いてみると、優乃さんはグラウンドの脇の方……丁度投球練習の機器を置いてある場所を指差した。 「……あれ、女……の子?」 「そう、橘みずきさんっていうんですって。女の子でプロ野球選手を目指してるみたい」 「へぇ……それは凄いね……」 女の子の野球選手というのは見た事がない。物珍しさと好奇心でぼーっと眺めてみた。 ……背丈は女子にしてはだが、なかなか高い。恐らく160は超えてるだろう。青空を想起させるような色の髪の毛をサイドアップにしていて、投球の度に風に乗って舞う様が目を引く。 表情は良く見えないが、なんとなく勝気な雰囲気は感じ取れた。 (女子の投手、ねぇ……) 俺はその姿から目を離して立ち上がり、帽子をかぶり直した。 「そろそろ練習、再開してきます」 なんとなく、楽しそうにボールを投げているのが、眩しいように感じた……気がした。 ……羨ましくも感じたのは、絶対に気のせいだろう。
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