5人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
新入部員が入ってから一週間後。
もうみんなそこそこ部活には慣れてきた頃。
今日も空は良く晴れていて、雨が降る気配は無い。
授業の関係で部活に少し遅れて顔を出し、部室に道具を取りに行こうとしたら、部室の方からなにやら話し声が聞こえてきた。
「パワプロ先輩は――――」
……俺の話?
俺は不審に思って訝しげな面持ちで部室の前で聞き耳をたてた。
すると、ぼやけていた声がよりはっきりと聞こえてくる。
話しているのは……後輩の鶴屋君と、聞きなれない女の子の声。
「関係無いですよ。他人の空似では?」
「んー……でも聞いてた特徴そのまんまなんだよねー」
野球部室にいるような女子は優乃さん以外は居ないはず。となると……中で話してるのは鶴屋君と、橘……とかいう奴だろう。
「あれ? パワプロ君、なにしてるでやんす? ……なんか怪しいでやんすよ」
「しーっ。矢部君、ちょっと静かに」
「……?」
通りがかった矢部君を手で制して、俺は引き続き聞き耳をたてる。
「まぁ本人に聞いてみよ。ありがとう鶴屋くん」
「は、はぁ……」
部室から出てくる気配を感じ、俺はパッと扉から身を離してあたかも通りがかったかのように振る舞う。
直後開いたドアからは、予想通り、橘が出てきた。
「あ、先輩。こんにちは!」
「……こんにちは」
最初のコメントを投稿しよう!