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くらっとするような笑顔で挨拶をされ、俺は言葉が詰まるのをなんとか抑えて挨拶を返す。
「???」
事情の飲み込めない矢部君は俺の不自然極まりない行動に疑問符を浮かべまくっていた。
説明する時間も惜しいので、俺は部室の中に入って鶴屋に声をかける。
「やっ、鶴屋君。どうしたの浮かない顔して」
「あ、パワプロ先輩……」
「橘って奴に俺の事を訊かれてたんだろ?」
いきなり核心付いた事を言ったら、鶴屋君は目を見開いて驚いた。
「き、聞いてたんですか。すみません、咄嗟に誤魔化してしまったんですけど……」
「いや、ありがとう。正直話されて何か訊かれるのも面倒だしね」
「そろそろ説明して欲しいでやんす。なにがあったんでやんすか?」
蚊帳の外が限界に達した矢部君が会話に割って入ってくる。
まぁ通りがかってしまったものは仕方が無いと、俺は一部始終を矢部君に説明した。
「ふむ……なんでみずきちゃんはパワプロ君に探りをいれるんでやんしょね?」
「それは、どうやら噂を聴いてやってきたらしいですから」
「なんだって?」
「160キロのストレートを投げる投手がいる、と。パワプロ先輩は一部の界隈では結構有名だったりするんですよ」
鶴屋君のの話が本当なのか知らないが、どうやら噂を聴いてやってくる選手がいる程度には話題になってしまっているらしい。……全然知らなかった。
確かに160キロなんてのはそうそう出せる速度では無いだろう。俺の持ち球だったわけだから、そこそこ自信もあった。昔であれば噂になった事も誇っただろうし、橘みたいな人が現れれば喜々として関わりに行ったんだろうけど……。
「そうか……。物好きな人もいたものだなぁ」
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