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あれから、半月。
あたしの元に届いた手紙。
それは、あの日に消えた先輩からだった。
───色んな人伝いに、君の住所をやっと聞き出せました。
ストーカーみたいでごめん。
でも、君があの日くれた間違い電話が、こうして僕に手紙を書く道筋を示してくれたと思っています。
読み終わったら、捨ててくれて構わない。
ただ、最後の僕の想いを伝えさせてください。
君が傘を貸してくれたのは、僕にとって運命でした。
後輩として入ってきた君に、僕は一目惚れをしたから。
だから、傘を貸してくれた時、僕はラッキーだと思いました。
連絡先も交換して、距離を縮めようと思った時、色んな災難が起こってここまで連絡出来ずに来てしまいました。
君に会いたかった。
会って、気持ちを伝えたかった。
でも、君がこれを読んでいる頃、僕は旅に出た頃だと思います。
こんな形でしか、想いを伝えられなくてごめんなさい。
突然の手紙を、許してください。
……大好きでした───
彼が旅に出た場所は、きっと素敵なところだと信じたい。
もう先輩には会えないけど、あの間違い電話を最後にさせたこのスマートフォンには、感謝をしている。
手紙に同封されていたのは、高校時代の先輩の写真。
(そうだ、この顔……)
あたしの記憶が、繋がる瞬間。
ほんのひととき、優しく柔らかな声を聞いていた。
アドレス帳を交換した時の先輩の笑顔が鮮明に蘇る。
(あたしこそ……もっと早く連絡すればよかった)
もう終わりを迎えたものは始まることはない。
そんな悲しい結末に───頬に一筋、涙が伝った。
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