追いかけて

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親子ほども歳の離れた男性を捜して旅をする少女と、熊野古道の分岐点である口熊野のユースホステルで相部屋になった。 ショート・ヘアがよく似合う愛らしい娘。素直で率直、独身なのにこんな娘なら欲しいと思ってしまうような、今どき奇跡のような十六歳だった。 名前は平がなで、つぼみだと教えてくれた。 「琴音さんはどうしてひとり旅なんですか?」 つぼみは無邪気に聞いてきた。 もちろん、それがどんなに残酷な質問なのか彼女は知る由もない。 まあまあ。とまるでオヤジするような誤魔化し方をしてその場を切り抜けるも、少し切なくなった。 楽しみの少ないユースホステルの夜は長い。そこでやっぱり恋バナから恋愛相談となった。 人は自分のことは棚に上げて、偉そうに指南できる動物である。 だけど話を聞くに従い自分がこの娘とは二回りも歳が違うのに、つぼみの母親とは一回りも違わないことに落ち込みそうになった。 そして追いかけているのはその母親の元彼だという。十六歳で三十六のわたしが知らない恋愛をしているようだった。 それはさておき、気を取り直して今迄聞いた話を整理する。 「その男性は肉親でも親戚でも恋人でもな
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