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――――やばい。
そう思った時には、すでに遅かった。
なんともいえない感覚がわたしを襲ってくる。
体の奥から溢れ出てきているのは、見えなくても分かっていた。
物凄いスピードで体外に出ようとする『それ』をわたしはどうすることもできなかったのだ。
冷たい感触が唇の上を容赦なく通りすぎる。
「あっ」
なすすべもなく『それ』は滴り落ちた。
わたしが小さく発した声とともに。
小さく鈍い音が、フローリングの床に響く。
言葉に表すなら「べちょっ」という表現が相応しいだろう。
だが、これで終わりではないことは、経験上学習済みだった。
わたしは、近くにあるティッシュを1枚乱暴に取った。
間に合わないかも知れない。
そんな不安が頭をよぎった束の間。
体の全神経が一箇所に集中する。
顔を少し反りだし、顎を突き出した。
肩が上がっていくのを止めることはもう出来ない。
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