この再会がもたらすものは

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1  収穫を終えた田畑が広がる農道の真ん中に、そのバス停は存在していた。  待合プレハブの中、三人掛けのベンチの片側の隅に僕は座り、人ひとり分空いたもう片方の隅に、少女が座っていた。  その少女は金色の両眉を真ん中に寄せ、その手に持ったワイシャツをじっと眺めていた。  少女の瞳は水色そのもので、顔の肌は一目で欧米人と分かる程には白く、金色の髪と茶色い髪が混在したような髪の毛を後ろでまとめ、幼く見える顔には、やや年寄り臭さを感じさせるような、太いフレームの眼鏡がかかっていた。  本人曰く、瞳の色を目立たなくするためらしい。  僕の視線はいつも、太いフレームの奥底にある目の隈や、白い肌に広がった紅色のそばかすに釘付けになってしまう。かっこつけた言い方をしてしまえば、それがこの少女が少女たる所以といえば良いんだろうか。白磁のようなくすみ一つない肌に何の価値があるんだろうと思ってしまう。  その少女は年寄り臭く、ふんと鼻から息を吐き、裁縫セットから糸切りハサミを取り出し、その手の中にあるワイシャツの胸ポケットに残った糸を、丹念に取り除いていく。  そのワイシャツの持ち主である僕はどうする事も出来ず、インナーシャツの上からブレザーを羽織り、その姿を見ていることしかできなかった。
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