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人生の春。
全国大会出場に向けてひたむきに努力する機会さえ失った、私に残された最後の青春。
――って、大喜び出来るなんて大間違いなんだからな! ばか!!
今日なんかなあ!
「ほい」
彼がイヤホンの片方を突き出してきた。もう一方は彼の左耳にささったままだった。
土曜の昼間からいきなり呼び出しといて、何様なんだろう。
しょうがなく、イヤホンを右耳にさす。その向こうからギターの音と甘ったるい優男の声が聞こえた。
「これ、何の曲ですか」
「カップルで聞いたら別れる曲」
血の気も引くようなお言葉だった。
「――はっ!? え、なんで」
急いで耳を外した。
彼はなぜか動揺する。
「なんでだ。ここからがいい所だぞ」
「なんでってこっちのセリフですよ! なんで付き合ってばっかりのカップルがこんな曲聞かないといけないんですか。ふっざけんな!」
一応言っておく。私はマジギレだ。
けれども、目の前の彼はそれを喜々として受け入れる。ドMじゃないよ? 変人だよ?
「ふざける……っはは、良い響だな。破局しかけのカップルが言いそうな言葉だ。どうだ、この際僕の部に仮入部もう一回してみるか? 乙女ゲーの分岐間違えて失敗する君が見てみたいよ」
「なんで私の墓穴を掘るんですか、本当にやめてください。ホント……これ以上失敗したくないんです」
これは私と彼こと金田さんの話。
是が非でも失敗したくない私と、失敗したい金田さんの話。
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