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とってもお優しいパソコン部のイケメンこと金田さんは続けてこういった。
「――君はゲーテを知っているか」
ゲーテだと。
そんなのだれでも知っているに決まっている。どうして常識を聞いてくるのだろうか。
「そんなの知ってますよ」
――アルプスの少女の母方のおばさんでしょ。
チーズ好きとアニメ好きなら誰でも知っている名作じゃないか。それがどうしたのだろう。
「では『彼」がこんな言葉を残した事は知っているか?」
金田さんが『彼』と言った瞬間、私は自分の間違いに気がついた。
けれども、訂正できるほどの知能が無かったので流した。
金田さんは彼ことゲーテの名言を発表した。
「彼は言った――ただの1日は間違いと失敗にすぎぬが、それが積み重なって、ある期間になれば結果や成功がもたらされる――と」
聞き終えて、私は我ながらにしょぼくれた頭に一つの結論をだした。
ふむ、つまりそれは『発酵バター一日で出来ない』と同じようなことだろうか。
けれども最近は発酵バターもご家庭で簡単に作れるらしい。一晩置く必要はあるけれども、そこまで難しいものでもないのに。
もしかして金田さんはお料理は得意では無いのだろうか。私だって『ミキサー』さえ使わなければ料理は作れる。キャベツの炒め物とか。
そこで、金田さんは自分でも腑に落ちなかったのか、丁寧に説明してくれる。
「これは人がある事業を成功させる場合、真剣に取り組んでも10年かかるという『10年ルール』又は1万時間かかるという『1万時間ルール』に則ったものだと考えられる」
ルールとか物理の講義らしきものが出てきた時点で、どうやら発酵は関係が無かったようだ。
「すみませんさっぱり分かりません」
そんな素直な返事が出来る私を私は大好きになりそうだった。
結局私は牛乳とチーズとバターで、表面パリパリのチーズパンが出来ることしか考えていませんでした。
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