後悔しても手遅れです(改稿版)

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「……ん……っ」  親指の付け根から指先に向かって、ゆっくりと舐め上げるように夏樹の小さな舌が絡みつく。 「ちょ、夏樹。それ以上は止めてくれ。私の理性がもたない」 「ふっ……んむ、んっ」  上目遣いに見上げた夏樹と久志の目が合った。  黒目がちの潤んだ瞳にじっと見つめられ、久志はゾクリと皮膚の内側が粟立つのを自覚した。このままではマズイと久志が慌てて手を引く。 「――あっ」  口元から離れていく久志の親指を、夏樹が名残惜しそうに目で追った。  半開きの唇は唾液で濡れ、ぽってりとした唇の隙間から赤い舌がちらりと覗いている。  久志は吸い込まれるように夏樹に近づいたが、あと少しで唇同士が触れるところでさっと身を引いた。 「――――あ……」 「夏樹、ダメだ。今ここで君に触れてしまったら、私はもう自分を止める自信がない」 「久志、さん……熱い……奥が……っ」 「……っ」  縋るような目で久志のことを見つめながら、お願い助けてと夏樹が訴えた。  夏樹は今普通の状態ではない。久志への甘えるような言動や、縋るような視線も、おそらく薬のせいだ。  分かってはいるのだが、久志も夏樹とまともに顔を合わせたのは久しぶりだ。とろけるような目で見つめられたら堪らない。  着ぐるみを着ている姿を見るだけで、抱き潰してしまいたい衝動に駆られ、それを必死で堪えているというのに、その上、子猫のように久志に甘えてくるなんて。 「久志さん、どうしよう……中が……奥が熱くて、むずむずする」  そう言って、着ぐるみ姿の夏樹がベッドの上で腰を捩る。 「な、夏樹? 奥って……?」  久志がごくりと息を飲みながら、恐る恐る訊ねた。 「理央くんに薬を入れられたんです……後ろに」 「――え?」  後ろという言葉に久志の眉が寄る。 「夏樹、後ろとはどういうことだ? 理央くんには薬を飲まされたんじゃなかったのか?」 「あの、薬……というか、カプセルを……後ろに、理央くんが……あっ、ん」  久志に説明している間にも薬の効き目が現れてきたようで、夏樹は顔を火照らせ、小さく声を上げるとベッドの上で体を丸めた。 「おい、大丈夫なのかっ?」 体を丸めてカタカタと震える様子は尋常ではない。もしかしたら、何か悪い副作用でも出たのではと心配になった久志が夏樹の肩に手を置いた。 「……あっ!」  途端、夏樹がびくりと体を震わせる。 「夏樹?」
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