後悔しても手遅れです(改稿版)

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 下着越しに久志の大きな手に包まれたまま、ふるりと体を震わせて夏樹は熱を吐き出した。 「夏樹、可愛いよ」 「――――んっ」  夏樹の目尻に浮かんだ涙を久志の唇が吸い取る。  そんなちょっとしたことでさえ、今の状態の夏樹には堪らない快感になってしまうようで、熱を吐き出したばかりだというのに夏樹の昂りは全く衰えていない。 「どうしよう、久志さん……まだ、まだ……あんっ」 「夏樹」  ここでやっと夏樹は薬の影響でこのような状態になっているのだと、久志は思い出した。 「大丈夫。君が楽になるまで付き合うよ」  そう言って久志は夏樹の額に唇を寄せた。 ※※※※※  昨夜、夏樹に付き合うとは言ったが、薬の効果があれほどとは久志も予想していなかった。  達しても、達しても、夏樹を襲う快感の波は引かず、最後は何も出ない状態にも関わらず、達したように何度も体をふるふると震わせていた。  明け方になって、やっと状態は落ち着き、今夏樹は久志の腕の中で静かな寝息を立てている。 「全く……自分の自制心を褒めてやりたいよ」  久志はため息をつくと、夏樹の額をそっと撫でた。  さすがにもう着ぐるみは脱いでいるが、久志に擦り寄って寝息を立てている姿は、まるで巣穴で安心しきって眠る子リスのようだ。  薬の効果が強すぎたため、昨夜の夏樹は半分意識を飛ばしており、執拗に久志へ自分の昂りを何とかして欲しいと強請った。  もちろん久志は出来るだけそれに応えたが、最後の一線だけは越えなかった。 「夏樹」  露わになった夏樹の額に久志が触れるようなキスを落とす。 「――――ん」  夏樹の額に落とされたキスは、閉じた瞼をたどり滑らかな頬へと移った。柔らかな果実を食むように久志が頬へ軽く歯を立てる。 「……あ、や……ん」 「夏樹」 「ん……久志、さん?」  頬にやわやわとしたくすぐったさを感じた夏樹が、ゆっくりと目を覚ました。 「おはよう」 「おはよう、ございます……あの……」 「気分は? 頭は痛くないか?」 「大丈夫です、って――え? えっ? 久志さん? ここ、どこ……」  ベッドの中で久志にくっついたまま、夏樹がキョロキョロとあたりを見回す。  徐々に自分の置かれている状況が分かってきたのか、夏樹の顔色が変わった。 「ここ……もしかして、久志さんの……」
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