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「 そんなに焦らなくても、君の体調が戻ったら、昨夜私が我慢した分も含めて存分に愛してあげるから」
だからほら、顔を離しなさいと久志が夏樹の肩を掴み、そっと押し返す。
「夏樹?」
「…………」
「夏樹、どうしたんだ? ほら、そんなところにくっいたままだと、君の愛らしい顔が見えないじゃないか」
股間から顔を離すように久志が夏樹に促すが、夏樹はなぜか久志の股間から離れようとしない。
(ど、どうしよう――顔を上げろって言われても、どんな顔で久志さんのことを見たらいいんだよ……っ)
一刻も早くこの恥ずかしい状態を何とかしたい。だが、その後のことを考えると離れるに離れられない。
(消えてしまいたい)
夏樹は久志の股間に顔を埋めたまま、心の底からそう思った。
映画やドラマならここで場面が変わって、実は夏樹の妄想でした、めでたしめでたしな展開もありえるが、残念なことにこれは現実だ。
いくら夏樹が現実を認めたくなくても、鼻先には下着を着けていない久志の久志がものすごい存在感で密着している。
(目を開けなければ大丈夫。サッと離れて、すぐにベッドに潜り込もう――もう、それしかない!)
「夏樹?」
様子のおかしい夏樹に久志が声をかけるが、集中モードに入っている夏樹に久志の声は聞こえていない。
失敗は許されない。
夏樹は頭の中で一連の動きをシミュレーションすると、閉じたままの目をさらに固く瞑った。
(――――よし!)
久志の腿を掴む夏樹の手に力が入る。
えい!と心の中で掛け声をかけて夏樹は久志の股間から顔を離した。
「久志さん、松本くんの具合はいかがです…………か?」
ここにいないはずの芹澤の声に集中が途切れてしまった夏樹は、固く瞑っていた目を開いてしまった。
以前、偶然目にしてしまった巨大な久志のモノ越しに、芹澤がこれ以上ないくらいに目を見開いて久志と夏樹のことを凝視している。
「ひっ、久志さんっ! あなた、松本くんに何をさせているんですかっ!」
夏樹は芹澤が感情をむき出しにしている所を初めて見た。
芹澤さんでもこんな顔するんだ、と夏樹が呆然としてる間にも芹澤は夏樹たちの方へと駆け寄り、素早い動きで夏樹のことを久志から引きはがすと、すぐさまベッドへ押し込んだ。
「なんだ芹澤、早かったな」
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