後悔しても手遅れです(改稿版)

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(盗撮って言っても写真撮られただけだし、部屋に入られても何も盗られてないし……会社の人みたいだけど、別に働いてて何かあったこともないし……もう犯人も飽きたんじゃないのかなあ。芹澤さんもちょっと大げさなんだよ) 「あれ? 松本くん?」  夏樹が四個めのコーヒーゼリーに手を伸ばした所で、ふいに背後から名前を呼ばれた。 「――山下?」  振り向くと夏樹の背後に山下が立っていた。 「どうしたの? 買い物?」  人懐こい笑顔を浮かべた山下が夏樹の側へやって来る。 「あ、うん。夕食、家に何もなかったから」 「それにしてはお菓子ばかりだね」 「これから弁当を選ぼうと思ってたんだ」  遠慮なくカゴを覗き込む山下へ、夏樹が決まり悪そうに答える。 「松本くん、夕食まだなんだ。それなら家で一緒に食べる?」 「えっ?」 「実はこれから今村くんも来るんだ」 「修一も?」 「うん。今村くんの持ってない食玩が家にあるんだ。僕は同じのを何個か持ってるし、あげようかと思って」  そう言えば、山下も修一も食玩集めが趣味だった。  以前修一が、山下のコレクションはなかなかのものだと言っていたのを夏樹は思い出した。 「修一が来るなら、俺も行こうかな」 「そう? ならおいでよ。僕の部屋、ここから結構近いんだ」  ぱっと嬉しそうな顔を見せた山下が、待ちきれないとばかりに夏樹の手を取る。  普段から穏やかで、強引な所など見たことがない山下がいきなり夏樹の手を取るなんて。山下らしくない行動に夏樹が目を瞠る。 「や、山下?」 「どうしたの、早く行こうよ」  すぐにでもその場から夏樹を連れて行こうとする山下の手から逃れようと夏樹が手を引くが、それ以上の力で山下が手首を握り返してくる。 「あの、わかったから……先にお金を払いたいんだけど」 「あ、ごめん」  それでも山下は夏樹の手を掴んだまま離してくれない。 「山下、手。離して、お金払えないから」  困った様子で夏樹が訴えたことで、やっと山下は夏樹の手を離してくれた。  レジでお金を払う間も山下は夏樹の背後にぴったりとくっついており、まるで夏樹のことを逃がさないとでもいうようだ。  さすがの夏樹も山下の行動を不審に思い、ちらりと背後を振り返ったが、山下は「どうかした?」と相変わらず人懐こい笑顔を浮かべているだけだ。 「山下……俺、買い忘れがあった。ちょっと買ってくるからここで待っててくれる?」
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