冗談じゃない

3/12
前へ
/12ページ
次へ
「ご機嫌よう。」 「あらあら、ご機嫌よう。」 私が座る前に出発するものだから、少しふらついてしまったわ。顔覚えたから、旅が終わったら父に言ってクビにしてやるわ。 手すりでなんとかバランスを支えながら、目があったご婦人と会釈を交わす。 が、このご婦人は… なんというか、その…はっきり言って汚いわね。 土が着いた白い生地を頭に巻いて、腕まであるエプロンですら汚れている。 しかも片手にはザルを持ち、土の付いた野菜が無造作に並べられている。 (一番後ろが広くて座りやすそうね) 「固っ!!」 何この…ソファー? え?ソファー…? 粗ファー(毛皮)ってこと? ま、まぁいいわ… さて、このまま舗装もされてない道のりを、ただただ畑を見ながら過ごすのも良いのだけど…長い旅にするつもりはないわ。 今回の目的…というか、目的地を確認しましょう。 私は今、昔父がお世話になった…友人の家に向かっているわ。 渡されたのは一枚の地図のみ。 しかも航空写真ってなんなのよ。 地図ってか写真じゃないの。 でも、さすがにノーヒントってわけじゃないわ。 『綻村』(ほころびむら) そこが私の目的地で、そこにたどり着くのが目的。 あとはまあ…一週間過ごせばいいだけ。 (一週間もキャビアなしで生きられるかしら…) 「次は~綻村、綻村です。」 「ふぇ!」 つい驚いてしまったわ。 車の中でアナウンスとは…なかなか気が利いてるわね。 止まったら降りればいいのよね、こんなの楽勝よ。 「ご機嫌よう」 「お嬢ちゃん…お金は?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加