第1章 わがまま娘

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あたしの家では、一匹の大きな金魚を飼っている。デメキンの「デメ」だ。 パパが休日に、デメを瓶に移し、水槽を洗って、きれいな水の底には透明なガラスの石を敷き詰める。 ママは餌をやるのが日課になっている。 あたしの名前は「ララ」。デメの、赤くてきれいなウロコと長い尾びれを、水槽の前で、何となく見ながら時間を潰すの。 フワフワと揺れている尾びれを見ていると、時間を忘れてしまう。 ただ、デメの口はイヤ。 パックリと開けたときのまぁるい口。嫌い。 そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、嫌がらせのように、デメは口をパクパクするの。イラつく。 いっそうのこと、デメを丸ごと食べちゃえば、あんな口、もう見なくて済むのに。 ああ、イライラし出すと止まらない。 あたし、水槽が壊れない程度に、バンバンと叩いてやった。 すると、ママに叱られて、余計イラついた。 それから、ずっと考えたの。デメに嫌がらせしてやろうって。 よし、パパとママがいない土曜の午後、決行だ。 そして当日、こっそりと洗剤入りの餌を作って、デメに食べさせた。 水槽から少し離れたところで、お昼ご飯を食べながら観察したけど、デメは普通に泳いでいる。 相変わらず、口をパクパクさせて、こちらを見てるの。 イラつく。 しばらくすると、その口から出た丸い気泡が、だんだん大きくなりながら上がっていき、水面から出て宙に舞った。 そのシャボン玉は、2つ、3つ、4つと続いた。 「プッ」 あの憎らしい口から、たくさんシャボン玉が出てくるの。 「キャハハハハ」 なのに無表情で、それがアホっぽくておもしろい。 「ヒャハハハハ」「ヒ―ヒ―」 あたしは、腹を抱えて大笑いした。 すると、頭の中に声が聞こえてきた。 『君、知ってるかい?』 ハッとして、気が付くと、部屋中シャボン玉だらけ。 これはまずい!ママが帰って来る前に何とかしなくちゃ! 大急ぎで、両手でシャボン玉を割っていると、また声がする。 『シャボン玉にも、突然変異があるんだ』 この声は何?誰の声?落ち着いていて、ゆっくり話す低い声。
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