1人が本棚に入れています
本棚に追加
……まさか!?
恐る恐る水槽に目をやると、デメがこちらを見ている。あたしの方に体を真っ直ぐに向けて、口をパクパクして、話掛けてる。
こんなひどいことをされて、嫌な思いをしているはずなのに、洗剤入りの餌を食べて、多分苦しいはずなのに、恨みも悲しみも感じられない、気持ち悪いほど無表情。
それが何故か、何か企んでいるようにも見えて、緊迫した感じ。
そして、また話し始めた。
『どれくらいの確率だろう。突然変異のシャボン玉が生まれるのは』
『それは、簡単には割れない、ガラス玉のようなシャボン玉さ』
そんな声にはお構い無しと思わせるように、でも、その声に聞き入りながら、背伸びしたり、ジャンプして、大量のシャボン玉を割り続けていると、両手のひらに、ポン…とシャボン玉が一つ乗った。
割れない。突然変異?
『あぁ、それだ、突然変異』
あたしは、そのシャボン玉を
じっくりと見た。
そこには、あたしの両目が映り、だんだん顔がはっきりと映し出され、その顔は小さくなっていき、やがて体全体がシャボン玉に映り込んだ。
こんな小さなシャボン玉に、体がすっぽりと映るなんて…。
ん?体がすっぽりと?入ってる!?
あたしが、シャボン玉の中にすっぽりと入ってる!
『突然変異のシャボン玉を見つめると、丸飲みされるのさ』
それを先に言ってよ!
あたしは、シャボン玉の内側からドンドンと叩き続けたけど、ヒビすら入らない。ただ、ゆらゆらと揺れるだけ。
『無駄さ。他の誰かが、そのシャボン玉を見つめて、そいつと入れ替わる以外に、出る方法はないんだ』
そう言ったときには、デメは横を向いて、目を反らしていた。
シャボン玉は、少しだけ開いている小窓からの風に誘われて、外へ出てしまったの。
一匹の猫がこちらに気付いた!背伸びして、両手を伸ばしてくる。
お願い、見つめて!
最初のコメントを投稿しよう!