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「今のところは何もやりたいことも決まってないし、だけど高卒で就職もきついだろ。いちおう大学くらい卒業しておかないとさ」
「それはそうだと思うけど、大学によっても勉強することって違うし、今からわたしと同じ大学に行くって決めなくてもいいんじゃない?」
「ここらへんで一番大きい大学だろ? いろんな学部があるさ」
葉月は心配であるような、あきれているような、そんな表情を浮かべていた。
「葉月はもう進路決めてるんだよな。学校の先生になりたいんだっけ」
「いま、ちょっと……迷ってるんだよね」
「どうして? ずっと前から言っていたじゃないか」
葉月が学校の先生になりたいといっていたのは、ちょうど去年の今ごろだろうか。もしかしたらずっと考えていたのかもしれないが、初めて聞いたのはそのころだった気がする。
「大学もそれで決めたんだけどね……ほんとに最近だよ。ほら、学校の先生って、生徒たちの人生に関わってくる存在だよね。そういうのを考えると、わたしが先生をやって、本当に大丈夫なのか、不安になってきちゃって……」
「……そうやって考えられるなら、いい先生になりそうだけどな」
将来に悩む葉月が、少しうらやましかった。僕にはまだないものだった。
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