清和先輩ルート

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柊に関する騒動から約1か月が経過し、学園は今日から夏休みだ。 初めこそは女である俺を受け入れることに批判的だった学生からの嫌がらせはあったものの、今ではもうほとんどそれもない。 嫌がらせといっても、会長という立場にいる俺にそこまで大々的なことはできないため、すれ違い際に悪口を囁いてくる程度だけど。 終業式は終わり、俺はお気に入りの場所である図書室に来ていた。 ……平和だなぁ 俺は頬杖をつき、図書室の窓からグラウンドを眺めながらそんなことを考えていた。 野球部とサッカー部が部活に勤しんでいる。元気だなー 俺は毎年のごとく、この図書室に籠る気満々だ。 さすがにお盆には帰るけど、それ以外は毎日のようにこの図書室に通い詰める。 いくらエスカレーターとはいえ、一応受験生だし勉強もしたい。 俺以外に人はいないし静かで、冷房も効いていて勉強するには最適な場所。 …まあでもとりあえず今日は、読書しちゃおうかな。 BL小説コーナーに向かい、本を物色する。 …お。これ読みたかったやつだ。ラッキー 喜々として何冊か本を取り、席に戻る。 俺は噛り付くように本に集中した。 20ページほど読んだときだっただろうか。 ガララ、と図書室の扉が開く音。 しかし集中していた俺はその音にも気付かず、本を読み続ける。 「―――――やっぱここにいたか」 「…………」 「……おい」 「…………」 「おいって」 「…………」 「おい、山田」 「ぎゃあ!?」 耳元で息を吹きかけられ、俺は全身が際立った。 本を床に落とし、リアルに飛び跳ねる。 そんな俺の反応に、清和先輩は大笑いした。 「なんだよそれ」 「誰のせいだと思って!」 「俺様の呼びかけに反応しねぇからだろ」 でたナチュラルに俺様。 ジト目で清和先輩を見る。てか何でここにいんの。 「卒業したくせに、どうしたんですか」 「ひでぇ言い様だなテメェ。OBが来ちゃ悪いのかよ」 「俺の安寧を邪魔してくれたので、悪いですね」 「ここは公共の場だ。お前だけの場所じゃねぇ」 ぐう正論。 俺はそうですね、と言ってため息をついた。 清和先輩は俺の横にどっかりと腰かける。 「……それで、本当にどうしたんですか?っていうか、久しぶりですね」 柊の件が解決してからはほとんど会っていない。
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