『 自分の【 逢いたいヒト 】』

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「小湊さん。すっかり忘れていたけれど、学生証返してよ」 龍之介は 隣りを黙って歩いている美沙に言った。 「あ…忘れていた。ごめん……あれ?」 ポケットを 探っていた美沙は 「落としちゃった…みたい……」 「え?! ど、どこに?! まさか…あの中?!」 「……」 ふたりの頭の中には 遥か彼方に消えていった未確認飛行物体の姿が。 「 『 嘘 』って言ってっ…?!」 その場に座り込む 龍之介の横で 「また出して貰えばいいじゃん」 圭一郎が言った。「それぐらい、してくれるでしょ?」 「だけど……」 煮え切らない龍之介に 「なんなの? 頼むの嫌なの?」 「…そうじゃ…ないけれど……」 「大学で新しいのが貰えるのなら、それでいいじゃん」 落ち込む 龍之介の姿を見ていた美沙は 「…あ……っ!」 学生証に挟まっていた写真を思い出した。
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