第1章

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私は警察じゃないし探偵でもないからな。そのお願いを叶えてやることはできない。聞いてやることぐらいしかな。聞きたいことがあったら何でも答えよう。事件の概要か? 時庭心が自殺したのは一年前、夏休みが始まって五日後の七月二十五日だ。早朝六時半、朝練に来た生徒が花壇の中に倒れている時庭心を発見した。すぐに職員室に教師を呼びに行った。教師は時庭心を確認すると救急車と警察に電話した。 その時、時庭心は意識はなかったそうだし、頭から大量の血が流れていたらしい。発見した生徒は保健室に教師は色々な対応に一度現場を離れたらしい。警察と救急車が到着して現場に案内した所、時庭心の遺体は忽然と姿を消していたそうだ。大量に流れていた血は地面が土だったからか染み込んでしまって残っていなかったそうだ。警察は結局事件として取り扱ってくれなかった。時庭心の遺体は今でも見つかっていない。  つまり、戸籍上では時庭心は生きている。でも、家族も同級生も皆が時庭心は死んだと言っている。家族なんて遺体すら見つかっていないのに葬儀までしたそうだ。異常だろ? 私もそう思う。でも、この時庭心の関係者は彼女が死んでいることは当たり前で、真実らしい。それが事件の概要だ。それ以上の事は私も知らない。私が赴任してきたばかりの頃に起こった事件だからな。  後は色々と聞いて回ってみるといい。校内を調べるにあたって色々と手をまわしておく。こう見えて顔は広いんだ。そうだな。最後に私にも君の捜査? の結果を報告してほしい。強制ではないよ。ただのお願いだ。でも、一つだけこの学校を調べるにあたってアドバイスをしておこう。この学校の人間達を信用しないほうがいい。皆、嘘吐きだからな。 * * * * 『クラス委員 豊田千恵』  どう? クラスには慣れた? うちのクラスは取っつきやすい人が多いから馴染みやすいと思うんだけど。え? 時庭心を知っているかって? うーん。もちろん知ってるよ。この学校で知らない人なんていないんじゃないかな。去年の事件は有名だからね。あ、でも私は直接の面識はないよ。友達が同じクラスだったの。
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