ノルニルの木片

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 店を出て、黙って三人は車に乗り込んだ。 しばらく走ったところで、室町が助手席に座る藤堂に聞いた。 「どうだった」 藤堂はまだ寒気がしていた。 そして小さくつぶやいた。 「お前、殺人者の血が代々伝わるって…信じられるか?」 室町は、首を少しかしげながら、通りの信号を見ていた。 「聞いたことないな。ホラーとか…スリラーとか、読み過ぎじゃないのか?」 「…だよな…」 藤堂は呼吸を大きく吐いた。 「どうした…」 「お兄さん…」 「…ああ…」 「…殺人者…的だ」 本当なら「人を殺している…」と言いたいところだが、断定してしまうことはできない。 室町は驚いて、藤堂を見た。 藤堂は慌てて室町を軽くたたいた。 「前を見てくれ」 「あ、あぁ…」 楠田が後部座席から頭を突っ込んできた。 「殺人者的…ですか?」 藤堂はチラっと楠田を見ると、周りの景色をぼんやりと見つめた。 「子供も…」 「え?」 楠田と室町が同時に聞き返した。 「子供?」 「先生、まだ4ケ月の赤ちゃんですよ」 「…そうだな…」 だが、あれも殺人者が持つ瞳だ。 何歳であろうと関係ない。 藤堂には、今その人間が持っている運命が見えるのだ。 ただ、この先、その運命がどっちに転がっていくのかは全く見えない。 室町も楠田も、ただ驚いているだけだ。 そうだろう、藤堂もそれを感じた時、一瞬頭が真っ白になった。 室町の電話が鳴った。 「誰だ」 室町は胸ポケットから電話を出すと、藤堂に渡した。 「神谷…って出てる。先輩じゃないのか?」 「あぁ…」 室町はすんなりと車を路肩に停めると、電話に出た。 「はい、…え?」 室町はかなり動揺していた。 「はい、わかりました、はい、戻ります」 かなり短い会話が済むと、室町はうなってハンドルにしがみついた。 「どうした?」 「…あぁ…、」 「どうしたんだって…」 「驚くなよ」 前置きが長い。 藤堂と楠田は黙って室町を見つめた。 「誘拐された子供が遺体で発見された現場の近くから…、死後…10年くらい経った子供の白骨死体が数体発見されたそうだ…」
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