ノルニルの木片

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「刑事さん、…あの子は生まれてきちゃいけない子だったんです…。僕なんかの血を受け継いで…かわいそうに…だから殺した…その方がいいんだ…その方が…」 電話の向うでガチャガチャと音が鳴った。 女の声に変わった。 「室町さんですか?」 奥さんだ。 「はい」 「すみません、また…電話してしまって…」 「返してくれ」 男が電話の向うで夫人に泣き声で訴えていた。 「今日は、もう部屋に引きこもりっぱなしで…」 「店は大丈夫なんですか?」 「ええ、まぁ…今日はお休みにしましたけど…従業員の為にも閉店ばかりしてられませんし…それに、任せられる調理師がいるので…何とか…メニューを減らして対処しています」 夫人の疲れた声が、悲壮に響いた。 「切ります、すみません…」 電話が切れた。 「室町」 先輩刑事の神谷が急いで近づいてきた。 黙っていれば綺麗な女性だが、口が悪すぎる上に日々の9割は機嫌が悪い。 「はい…」 「足!行儀悪い!ここは家じゃないんだ」 神谷はそう言いながら室町の足を叩いた。 「君は子供か!…ったく…」 「すみません」 室町は叱られた子供のようにしょんぼりしながら足を下ろした。 「室町、行方不明の子供の遺体が見つかった」 「え?」 「山に埋められていた」 室町の背中を悪寒が走った。 たった今、聞いたような話だ。 「しかも二人…、先週行方不明になった子と、2週間前にいなくなった子が一緒に埋められていた…。やっぱり同一犯ってことになるな…」 「山に埋めた…」 向井は確かに会った時から何度も何度もそう言っていた。 偶然だろうか…。
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