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目の前に映るは、着物を着た、黒髪を背中迄伸ばした女性…。
「我が名は月詠。地の神、闇を司る者です。」
「月詠様ですか?」
「はい、そうです。」
月詠…、夜神家では氏神として奉っている神様である。
「それでは、早速契約いたしましょう。」
月詠は僕の頬に手を添えて唇を重ねた。
「これで契約完了です。私の能力はあらゆる生き物から生気を奪うことです。」
「了解しました。ありがとうございます。よろしくお願いします。」
気がつくと魔法陣の前に戻っていた。
「黄泉君はどうだった?」
戻って来ると晴菜が話しかけてきた。
「きれいな黒髪の女性だったよ。」
「へぇ、すごいな♪」
「晴菜だってすごいよ。天使様だなんて。(多分、女性の天使というのは四大天使の一人、癒しの天使ラファエルだろうね。)」
「ところで、黄泉君。」
僕の両肩に手を置いて来る晴菜。
「何?晴菜。」
「私とその女性だったら、どちらがタイプかな?」
これは答えを間違うといけないよな?というか、答えは決まっているが、
「晴菜に決まっているじゃない。」
僕は笑顔で答える。
「そう?ありがとう♪」
素っ気ない返事をしながら、満面に笑みを浮かべ顔を赤くしている晴菜。
「罪作りな殿方ですね、貴方は。」
「そうですね。晴菜様が男性と普通に話しているのなんて初めて見ましたわ♪」
「何を言っているの、あなた達?」
声をかけて来たのは二人の女性、耳にかかる位の短髪の女性と肩にかかる位の髪を結んでいる女性。短髪の女性は剣を腰に差し、もう一人は杖を構えている。
「ずっと見ていましたのよ。楽しそうに話していたじゃない?」
「そうだけど…、いつから見ていたの?」
「最初からよ?」
顔を赤らめる晴菜。
「申し訳ございません。紹介遅れました。晴菜様の侍女を務めさせて頂いております、天宮光樹です。」
短髪の女性。
「天宮奈月です。」
長髪の女性。
「僕は…」
「夜神黄泉君でしょ?話、聞いていたから。」
言う前に遮られた。
「君も大変ね…。晴菜は天道家に集ってくるハエからしたら恰好の獲物だからね。」
「それを邪魔され、独り占めされる形となれば、君は邪魔な存在だからね?」
「それはそうですね…。」
嫉妬や怒りといった気があちこちからあふれ出している。
「黄泉君、夜道でなくても、気を付けるのよ?」
「はい、ご忠告ありがとうございます。」
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