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「ほらじゃあ席動かせー」
「ほら早く移動しなー、動かないと次の人に迷惑だろ」
前の席の小野田に邪魔だ退け、と言われ渋々自分の席から荷物を出す。
俺の隣には次にこの席に座るクラスメイトが自分の荷物を持って立っている。
でも嫌なんだ。どきたくない。
席替えで江澤と離れられると思った少し前の俺。
そんな自分を恨むが良い。
浅はかだった。天は俺が大層お嫌いらしい。
「よろしくね、柿崎」
左側から感じる視線が痛い。
その視線は先ほどまでは後ろから感じていたものだ。
それをなぜ左側から感じるかって?
そんなの……そんなの。
「いやー嬉しいな。またこうして柿崎の近くの席で」
女子が見たら卒倒しそうな笑顔と共に江澤が言った。
そう、これが事実なのである。
何の因果か俺はまた奴と席が隣同士になってしまったのだ。
まあ今度は上下の関係ではなく、左右の関係になった。
プリントを渡したり、受け取ったりすることがなくなっただけでも善しと考えるしかない。
それでも今まで感じなかった横からの視線が本当に、本当に痛いんですけど!
なにこれこいつ目から針でも出てるのか?って疑いたくなっちゃうくらい痛い!
「今度からは必死に勉強している柿崎の横顔が見れるね」
おしゃれアイテム黒縁メガネをクイッとあげながら綺麗な笑顔で奴は言う。
あー、本当ムカつく。
そちらを意識しないように視線を外すと前からプリントが回ってきた。
どうやらこの時間にやろうと思っていた課題らしい。
担任の思い付きで席替えをしたので出来なかったのだろう。
どうやら次の時間までに仕上げなければいけないらしいが……。
課題をもらうくらいなら席替えなんてしなくてよかったのに。
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