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「はい、これ」
今までは後ろの席が江澤だったから無言で前を向いてプリントを回してきたけど今度からはそれも止めだ。
むしろ横からの視線を感じないくらい後ろの奴にかまい倒さないといけないと思うんだ!
後ろを向くと座っていたのは出席番号36番の宮田だった。
宮田は一匹狼的な感じでクラスにいる。
特定の親しい人はいないが、別に孤立しているわけでもない。
少しクールなその目元や、態度が女の子に人気らしい。
「……ありがとな」
俺に顔を寄せ、耳元で小さく礼を言うと、宮田は微笑みながら俺の頭を二度ポンポンと叩いた。
その雰囲気や流れが妙に気恥ずかしくて、俺は顔面を真っ赤に染める。
「柿崎、これからよろしくな……」
「う、うん……」
多分俺がやっても同じ効果は得られない。
イケメンは何するでも本当に得だと思った瞬間だった。
今回の席替えは悪いことだけじゃなさそうだな!と落ちていた俺の気分を少し上させたのだった。
俺が前を向いた後、俺の後ろと俺の横で火花が散りあっていたこと。
そして江澤の後ろの席……つまり宮田君の隣になった下田君が、その光景に怯えている事なんて。
気分が浮上した俺は既に前を向いてしまっていたから、俺は知るはずもなかった。
~3-B 生徒名簿~
出席番号 3番 宇津井
出席番号 4番 江澤
出席番号 5番 小野田
出席番号 6番 柿崎
出席番号 11番 下田
出席番号 36番 宮田
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