出席番号 6番と4番

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ちらっと視線をやりスケッチブックに視線を落とす。 あっちもこちらを見ているので必然的に視線が合ってしまう。 知ってはいたけどやっぱり正面から見ると、江澤は顔が良かった。 そんな男前が真剣に俺を見ている。 というか、本当にスケッチしているのだろうかというくらい俺ばっかり見ている。 「え、江澤ちゃんと描いてる?」 「描いてるよ」 「それにしてはちょっと……見すぎじゃない?」 「ちゃんと見ないと描けないよ」 江澤が返すのは至極正論だ。 きちんと見なければ描けない。それは今俺が身を持って体感している。 目が合うのが恥ずかしい、というか見れば見るほどコンプレックスを刺激されてしまうので観察できない。 俺のスケッチブックは輪郭を描くところで止まっている。 1分がとても長く感じるが、時間は刻々と過ぎて行っている。 俺のスケッチは全然進まない。 たぶん江澤はもう終えているのだと思う。先ほどまで断続的に聞こえていた鉛筆を走らせる音が止まっているからだ。 もう俺の観察なんてしなくてもいいはずなのに、江澤はずっと俺を見る。 そうして俺は俯くことしかできないのでスケッチは進まない。 悪循環だ。 「はい、そこまでー。終わらなかった奴は残って今日中に提出なー」 無情にも授業終了を告げるチャイムが教室に響く。 結局俺は江澤の視線に耐えられなかった。結果スケッチは全然進まなかった。 ということは居残りで描き上げなければならない。 「……江澤」 「居残りだね。放課後ここに集合にしようか?」 「うん……」 正直、正直、大っ嫌いな江澤と居残りとか嫌だ。 でもこのスケッチを出さないと評定を落とされるのも嫌だ。 嫌と嫌を比べて俺は結局江澤と居残りする方を選んだ。 「放課後、よろしくな……」 とりあえずどんなものでも提出すれば、やる気ありと認められるだろう。 さっさと描いてさっさと帰ってやる。 そうすればもう江澤と関わることはないんだから。 「じゃあ放課後ね」 眩しい位の笑顔を浮かべ、江澤は美術室を出て行った。 その笑顔を見たら何故だか背筋に悪寒が走った。 ん?俺もしかして選択間違えたかも?
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